「勝ち組」運送業者へ

1. 運送業の労務管理

運送業など、労働集約型産業は、労務管理上の問題を
抱えやすい傾向にあります。

最近では、2024年問題もあいまって、
ドライバーの転職などが増加し、人手不足が深刻化しつつあります。

運送業など、労働集約型産業の抱える問題点

賃金が低い傾向にある

労働時間が長い

離職率が高く労働力の供給より需要のほうが多い

生産性や効率が悪い

トラックドライバー需給予測

● 日本のトラックドライバー需給予測

2020年…約13万人不足
  ↓
2028年…約28万人不足

※鉄道貨物協会資料参考

● 米国のトラックドライバー需給予測

2020年…約8万人不足

年収500万円 ⇒ 800万円にしても集まらない

2022年5月
米国流通大手ウオルマート:新人ドライバーを年収1400万円で雇用

  ↓
2030年…約16万人不足

※アメリカトラック協会報告書

トラック運送事業者の事業規模

画像の説明

車両数が20台以下の事業者・・・76%

従業員数が20人以下の事業者・・・72%

トラックドライバーの労働時間

トラックドライバーの年間労働時間の推移

(2020年)

大型トラック2532時間/年間
中小型トラック2484時間/年間
全産業2100時間/年間

人手不足倒産再燃の可能性も

人手不足倒産が多い業種
帝国データバンクによる「2013~2019年の過去7年間の業種別累計倒産件数上位出所」で人手不足倒産が多い業種を見てみると、下記のようになっています。

  • 道路貨物輸送…74件
  • 木造建築工事…43件
  • 老人福祉事業…37件
  • 受託開発ソフトウエア…29件
  • 労働者派遣…28件
  • 建築工事…26件
  • 飲食店…22件
  • 土木工事…22件

人手不足倒産の推移

2. 運送業の2024年問題

2024年4月~の労働基準法改正改善基準告示改正により、物流業界では
労働力、売上高が減少、さらにはドライバー不足などにつながることが懸念されています。

運送業の2024年問題

働き方改革関連法の施行期日について

働き方改革・規制の内容

トラックの「改善基準告示」の見直しのポイント
トラックの「改善基準告示」の見直しのポイント

改善基準告示の見直し 年間拘束時間 3,300時間
(例外:3,400時間)による不足する輸送能力

不足する輸送能力(NX総合研究所 発表資料)

(2019年データ)

不足する輸送能力の割合不足する営業トラックの総トン数
14.2%4.0億トン

※本試算には、荷待ち時間や荷役時間の削減等による効果を含んでいません。

全日本トラック協会によると、

1.
長時間労働を背景にドライバー不足が深刻化
働き方改革は喫緊の課題

2.
若年労働者を確保し、優秀な人材を業界に呼び込むため、ドライバーの処遇、労働環境、労働条件の改善に努める

3.
物流条件の調整やコスト負担等についての理解促進を図るため、国や荷主を含めた関係者と緊密なコミュニケーションをとります

4.
2024年度には、時間外労働年960時間超のトラック運転者が発生する事業者の割合を0%にする

5.
助成金・補助金等の活用

取り組み内容

1.労働生産性の向上

A. 荷待ち時間、荷役時間の削減
B. 高速道路の有効活用
C. 市街地での納品業務の時間短縮
D. 中継輸送の拡大

2.運送事業者の経営改善

A. ドライバーの処遇改善
B. デジタコ等を活用したドライバーと運行効率の管理、IT点呼

3.適正取引の推進

A. 適正運賃・料金の収受
B. 多層化の改善

4.多様な人材の確保・育成

A. 女性、高齢者も働きやすい職場づくり
B. 働き甲斐のある職場づくり
C. 若年労働力確保に向けた取り組みの強化

3. 超勤割増賃金(2023年問題)

最近では、運送業ドライバーからの未払い残業代請求が増えています。

3年間の未払い残業代 ⇒

800万円

サービス残業

なぜ運送業が狙われるのか?

① トラック運転手は、労働時間が長い

② トラック運送業界は、労務管理が甘い

③ トラック運送業界は、離職率が高い

④ トラック運送業界は、証拠が集めやすい…デジタコ、運転日報など

なぜ運送業が狙われるのか?

これが、2023年問題!!

例、月額30万円のドライバー
1か月の所定労働時間 170時間  1か月残業100時間

月額30万円÷170時間×1.25×100間=約220,500円

過去2年分なら 220,500円×24か月=5,292,000円

過去3年分なら 220,500円×36か月=7,938,000円

過去5年分なら 220,500円×60か月=13,230,000,円

事の発端は、「国際自動車事件最高裁判決」令和2年(2020年)3月30日

「歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則定める割増賃金が支払われたとはいえない」

  • 時間外労働を抑制し、労働者への補償を行おうとする趣旨
  • 「通常の労働時間の賃金に当たる部分」と「割増賃金に当たる部分」とを
    判別することができることが必要である

 ⇒固定残業制などにも注意が必要

運送会社の運賃体系

①完全歩合給(オール歩合給)
※売上高、走行距離、積み下ろし回数などに連動した出来高

②基本給+歩合給
※固定給プラス出来高

③固定給・時間軸給(超勤手当、固定残業代など)
※基本給+手当+超勤手当など

完全歩合給制度

  • 残業代の計算方法により、割増賃金を抑えることができる
     ⇔社員の離脱
  • 長時間労働の抑制
    効率の悪い労働者(だらだら労働者)に高い賃金を支払う必要がなくなる
    =公平性、生産性向上 ⇔ 不公平な配車
  • 評価制度も兼ねる ⇔ 公平性?
  • 同一労働同一賃金に対応
    = 不公平な体系(手当)などは廃止する
     ※「ハマキョウレックス事件」「長澤運輸事件」
    =高齢ドライバーにもやさしい

割増賃金の計算

【月所定労働時間:170時間、残業40時間の場合】

■月給35万円の場合
(350,000円÷170Hx1.25)×40H=102,941円

■完全歩合給35万円の場合
(350,000円÷210Hx0.25)×40H=16,666円

【差額】
102,941円ー16,666円=86,725円

もし10人いたら
86,725円×10人=867,250円!

割増賃金の計算

完全歩合給制度導入にあたっての課題

①激変緩和措置
=給与が減るかもしれない不安を取り除く

②労働条件不利益変更
①を含め従業員へのしっかりとした説明

③法令順守(コンプライアンス)

④最低賃金との関係

⑤就業規則、賃金規程の改訂

⑥採用・求人
=会社の魅力をしっかりと伝える

完全歩合給制度導入へステップアップ

4. 健康経営

交通事故の未然防止などを含め、健康への関心が高まっています。

健康経営

事業用貨物自動車の事故率
※事故の件数自体は増えているわけではありません。

平成19年: 27,356件
   ↓
平成30年: 14,600件

「運転中のどんな操作のとき?」
⇒等速での直進時、60~70%

ドライバーの前方不注意ふとした時の判断ミス
原因の可能性

事業用貨物自動車の事故

5. 監査と巡回指導

「運輸局が行う監査」と「トラック協会が行う巡回指導」

実施機関行政処分事前告知
監査国土交通省(運輸局)含む
巡回指導適正化実施機関(トラック協会)含まない(原則)

【監査重点項目】

  • 事業計画について
  • 損害賠償責任保険の加入について
  • 社会保険などの加入について
  • 運賃・料金の収受について
  • 賃金の支払いについて
  • 運行管理の状況について
  • 整備管理の状況について
  • 自家用自動車の利用や名義貸し行為などについて

行政処分の内容

《処分に至らないもの》

  • 勧告
  • 警告

《処分》

  • 自動車その他の輸送施設の使用停止
  • 事業の全部または一部の停止
  • 許可の取り消し

勧告・警告

6. 安全

何よりも大切なのは、安全です。

安全職場を

Gマーク

Gマーク(安全性優良事業所)

  • 取得事業所は、未取得事業所に比べて、事故の割合が半分以下
  • 3テーマ38項目の厳しい評価基準をクリア
    ①「安全性に対する法令の遵守状況」
    ②「事故や違反の状況」
    ③「安全性に対する取組の積極性」
  • 2021年現在、26,940事業所(=約3割の事業所
    車両台数は、703,668台(=緑ナンバートラックの約半数

7. 働きやすい職場認証制度

働き方改革などの動きとあわせ、
働きやすい職場が、採用・定着の面で好評価されています。

働きやすい職場認証制度

「働きやすい職場認証制度」は、自動車運送事業者(トラック・バス・タクシー事業)の運転者の労働条件や労働環境を第三者機関が評価・認証する制度です。

  • 休日休暇の充実
  • 心身の健康のサポート
    (健康機器の導入や、メンタルヘルス診断の実施など)
  • 女性が嬉しい職場づくり
    勤務時間の調整、女性専用の仮眠室など
  • 将来も安心の制度
    けがや病気で働けなくなった場合の補償や、退職金制度、定年の延長など

《退職率の事例》

入社1年未満で退職する人(A運送会社)
68.5%

入社2年未満で退職する人(A運送会社)
9.9%=8割の社員が2年以内に辞める

入社1か月未満で退職する人(A運送会社)
38.2%=全体の3割は、1か月以内に辞める

人財が集まる運送会社

  • 責任のある仕事を任されチャレンジできることで、
    自身が成長できているなと実感することが出来ます
  • 仕事はもちろん、プライベートにも親身になって応援してくれる人たちの中で働けることは幸せです
  • とにかく頼りになる先輩が多く
    ドライバー同士が自然と密に情報共有しあう環境だと感じます
  • 社内には自分がやりたいことを積極的にできる風土があり、
    とてもやりがいを感じますね!
  • 従業員数が多い、未経験OK、退職金制度あり、ボーナスあり
    という点に魅力を感じました
  • 「よく来てくれた!ありがとう。」と、 心からの”ありがとう”をもらいました
    トラックドライバーという職業を選んでよかった。そう思った瞬間でした
  • ドライバーが仕事を終えてから気楽に雑談できるように、
    事務所でお菓子やコーヒーが飲めるような環境をつくっている
  • 会社で保有する会員制ホテルの使用も積極的に勧め、
    旅行に行くドライバーには10万円の補助を行っている
  • 信頼関係ができればお互いに気持ちよく仕事ができますし、無理をせず誰かに声をかけることで、きっと周りが優しくサポートしてくれます

ドライバーの不満

  • 労働時間
  • 賃金の決定方法
  • 賃金の額
  • 損害賠償
  • 危険
  • 人間関係

ドライバーの不満

8. 問題点チェックシート

現状、どのような課題、問題点があるかチェックしてみてください。

【問題点チェックシート】

1.2024年問題(労働時間管理)に適切に対応する方法がととのっていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

2.労働時間の上限など、仕組みを理解できていますか。
 □わからない
 □ほぼできている
 □できていない

3.年休5日取得義務が実現できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

4.2023年4月からの超勤単価アップへの対応はできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

5.未払い賃金の時効について、理解できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

6.未払い賃金の対応について、実現できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

7.同一労働同一賃金の内容について、理解、実現できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

8.運行管理・整備管理など、監査・巡回指導の対象基本項目は、問題なく実施できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

9.Gマークの取得や、自動車運送事業者の「働きやすい職場認証制度」の取得ができていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

10.助成金・補助金の申請実現へ向けた対応ができていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

11.荷待ち時間、荷役時間の削減など、対応はできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

12.デジタコ等を活用したドライバーと運行効率の管理ができていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

13.適正な運賃を請求できていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

14.女性・高齢者も働きやすい職場になっていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

15.若年労働者確保に向けた取り組みができていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

16.事務処理の効率化はできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

17.賃金制度の見直しが必要ですか。
 □わからない
 □不要
 □必要

18.社員の健康管理はできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

19.困った社員への対応はしっかりできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

20.営業拡大の仕組みは整っていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

21.社員の教育はうまくできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

22.社員のやる気はうまく引き出せていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

23.社員の定着はしっかりできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

24.採用について対策はきっちりできていますか。
 □わからない
 □できている
 □できていない

働き方研究所MiRAHATA

運送業様にしっかり寄りそい、

労務管理、労務課題に全力で
取り組んでまいります。


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