特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは?対象者・支給額・申請の流れを社労士が解説

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「高齢者を採用したいが、助成金が出るとは知らなかった」
「シングルマザーや障害者を採用することで社会貢献したいが、費用面が心配」
「特定求職者雇用開発助成金(特開金)という制度があると聞いたが、自社が対象になるかわからない」
このような経営者・総務担当者の方に向けて、制度の全体像をわかりやすく解説します。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者・障害者・母子家庭の母など、就職が特に難しい方を雇い入れた事業主に対して、1人あたり最大240万円(中小企業・最長3年間)を助成する厚生労働省の助成金です。実務では「特開金(とっかいきん)」と略されます。
ただし、この助成金を受け取るには絶対に外せない条件があります。それは「ハローワーク等の紹介によって採用すること」です。自社の採用サイト・求人サイト・知人の紹介で採用した場合は、どれだけ要件を満たしていても対象外になります。この点を最初に把握した上で制度を活用してください。
この記事では、大阪の社会保険労務士事務所「働き方研究所MiRAHATA」が、令和8年度の公式情報をもとに、対象者・支給額・申請の流れ・よくある失敗パターンまで正確に解説します。

この記事でわかること

・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の基本と他の助成金との違い
・令和8年度の主な変更点2つ(賃金台帳必須化・高年齢者要件追加)
・対象となる事業主・労働者の要件
・完全な支給額テーブル(中小企業・大企業別)
・申請の流れ(ハローワーク紹介から受給まで)
・よくある失敗パターン5つ
・キャリアアップ助成金との組み合わせ活用

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは?

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、雇用保険法第62条を根拠とし、雇用保険二事業の財源(事業主が納める雇用保険料の一部)で運営される助成金です。

他の雇用助成金との違い

キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金など多くの雇用助成金は「取り組み前に計画届を提出する」「就業規則の整備が必要」といった事前手続きが重要です。特開金の仕組みはこれらとは根本的に異なります。

比較項目特開金(特定就職困難者コース)キャリアアップ助成金等
受給の仕組み採用・雇用継続の実績に対して事後的に定額が支給取り組み前の計画届が必要
支給額の決まり方対象者の区分・企業規模・労働時間で決まる定額転換人数・賃金等に応じて計算
分割支給半年ごとに分割支給(最長3年・6回)2回払い等(助成金による)
就業規則の整備必須ではない多くの場合必須

申請先:都道府県労働局またはハローワーク(公共職業安定所)が申請窓口です。電子申請も利用できます。

令和8年度の主な変更点2つ

変更1|令和8年4月1日〜 賃金台帳の提出が必須化

令和8年4月1日以降の支給申請から、添付書類として賃金台帳の提出が必須となりました。賃金台帳の内容が確認できない場合は不支給となります。
労働基準法で定められた賃金台帳の記入事項(労働者氏名・賃金計算期間・労働時間数・賃金額の内訳等)をすべて記載した賃金台帳を整備・保存しておくことが必要です。

変更2|令和8年5月1日〜 高年齢者(60歳以上)の要件追加

令和8年5月1日以降に紹介を受けた高年齢者(60歳以上)については、雇入れ年齢が60歳以上であることに加えて、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが必要になりました。
令和8年5月1日より前に紹介された方については、従来どおり「雇入れ時の年齢が60歳以上」のみが要件です。

紹介の時期要件
令和8年5月1日より前雇入れ時の年齢が60歳以上であること
令和8年5月1日以降雇入れ時の年齢が60歳以上であること+紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていること

なお、令和8年5月1日以降の紹介では、原則として「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介が行われた場合のみ支給申請が可能です。

対象となる事業主の要件

以下の要件をすべて満たすことが必要です。

要件1|ハローワーク等の紹介によって雇い入れること(最重要)

本助成金の最重要条件です。以下のいずれかの機関からの紹介によって雇い入れる必要があります。

・ハローワーク(公共職業安定所)
・地方運輸局(船員として雇い入れる場合)
・厚生労働省の定める要件に同意した有料・無料職業紹介事業者等

以下の方法で採用した場合は対象外です:
・自社の採用ページ・求人サイトからの直接募集
・知人・取引先からの紹介
・ハローワークの求人票を経由していても、オンライン自主応募の場合

「求人サイトで応募があった後に、形式だけハローワークの紹介を受ければ大丈夫」というのも対象外です。本助成金は、ハローワーク等が実質的に職業紹介を行ったことが前提です。

要件2|継続して雇用することが確実と認められること

対象労働者を65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ雇用期間が継続して2年以上であることが確実と認められることが必要です。

要件3|助成対象となる雇用形態で雇い入れること

・正規雇用(正社員)
・無期雇用(期間の定めのない雇用)
・有期雇用(自動更新):「対象労働者が望む限り更新できる契約」に限ります。勤務成績等により更新の有無を判断する場合等は対象外です。

有期雇用で採用する場合は、雇用契約書に「自動更新」であることを明記することが必要です。「更新する場合がある」「更新することがある」といった曖昧な表現では対象外となる場合があります。

主な不支給要件

以下のいずれかに該当する場合は支給されません。

・雇入れ日の前日から1年前までの間に、当該対象労働者と雇用・請負・委任等の関係にあった事業主(または密接な関係にある事業主)が雇い入れる場合
・事業主・取締役の3親等以内の親族である対象労働者を雇い入れる場合
・支給対象期間中に対象労働者への賃金の未払いがある場合
・申請前1年以内に雇用保険・労働保険関係法令の違反がある場合
・高年齢者雇用確保措置を講じていないことによる勧告を受けた場合

対象となる労働者(3区分)

対象労働者は以下の3つの区分に分かれており、区分ごとに支給額が異なります。採用日時点の満年齢が原則として65歳未満の方が対象です(ただし①の高年齢者は65歳以上の方も対象)。

①区分 母子家庭の母等・高年齢者(60歳以上)等

以下の方が対象となります。

・母子家庭の母(児童扶養手当の受給者等)
・高年齢者(60歳以上)(令和8年5月1日以降は個別支援要件あり)
・父子家庭の父
・ウクライナ避難民
・補完的保護対象者
・中国残留邦人等永住帰国者
・北朝鮮帰国被害者等
・アイヌの人々
・その他、就職が著しく困難と認められる者

②区分 身体・知的障害者(重度障害者等を除く)

身体障害者手帳または療育手帳(知的障害者)を所持する方で、「重度障害者等」に該当しない方が対象です。

③区分 重度障害者等

以下のいずれかに該当する方が対象となります。

・重度の身体障害者(身体障害者手帳1・2級)
・重度の知的障害者(療育手帳でAまたは○A相当)
・45歳以上の身体・知的障害者
・精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)

精神障害者は「重度障害者等」として最も手厚い支援(最大240万円・3年間)が受けられます。

支給額テーブル(令和8年度・公式情報)

支給額は対象労働者の区分・企業規模・労働時間(短時間か否か)によって決まります。「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。

中小企業事業主に対する支給額

短時間労働者以外(週30時間以上)の場合

区分対象労働者合計助成額助成対象期間支給対象期ごとの支給額
①高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等60万円1年30万円×2期
②重度障害者等を除く身体・知的障害者120万円2年30万円×4期
③重度障害者等240万円3年40万円×6期

短時間労働者(週20〜30時間未満)の場合

区分対象労働者合計助成額助成対象期間支給対象期ごとの支給額
④高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等40万円1年20万円×2期
⑤身体・知的・精神障害者(重度含む)80万円2年20万円×4期

大企業に対する支給額(参考)

区分対象労働者合計助成額助成対象期間支給対象期ごとの支給額
①高年齢者等50万円1年25万円×2期
②身体・知的障害者50万円1年25万円×2期
③重度障害者等100万円1年6か月33万円×3期(第3期は34万円)
④高年齢者等(短時間)30万円1年15万円×2期
⑤障害者(短時間)30万円1年15万円×2期

「半年ごとの分割支給」の仕組みを理解する

特開金は、採用から一定期間後にまとめて支給されるのではなく、半年(6か月)ごとに分割して支給されます。
たとえば③区分(重度障害者等・週30時間以上)の場合、採用から3年間にわたって6回に分けて受け取るイメージです。

雇入れ日
【第1期支給申請】採用から6か月後 → 40万円
【第2期支給申請】採用から1年後 → 40万円
【第3期支給申請】採用から1年6か月後 → 40万円
【第4期支給申請】採用から2年後 → 40万円
【第5期支給申請】採用から2年6か月後 → 40万円
【第6期支給申請】採用から3年後 → 40万円
合計:240万円

大企業の場合は異なります。大企業(中小企業事業主以外)の③区分は助成対象期間1年6か月・支給回数3回で、第1期・第2期が各33万円、第3期のみ34万円(合計100万円)となります。「第3期は34万円」という数字は大企業側の例外規定です。中小企業は全6期均等に各40万円です。
なお、各期の支給額は「支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額」が上限となります。所定労働時間より著しく実労働時間が短い場合は減額されることがあります。

資金繰りへの影響

特開金はすべて事後払いです。採用直後に助成金が入ってくるわけではなく、最初の受給は採用から6か月後になります。採用に伴うコスト(人件費・採用費等)は先に自己資金で賄う必要があります。

申請の流れ【ハローワーク紹介から受給まで】

特開金の申請手順は、他の雇用助成金とは大きく異なります。「採択を待つ」のではなく、「雇用実績に対して事後的に申請する」制度です。

STEP 1|ハローワーク等に求人を提出する

まずハローワーク(または同意を得た民間職業紹介事業者等)に求人を提出します。求人票には対象となる就職困難者が応募できる内容で作成します。

STEP 2|ハローワーク等から対象労働者の紹介を受ける

ハローワーク等から対象労働者の紹介を受け、採用を決定します。この「紹介」が助成金受給の大前提です。
令和8年5月1日以降は、高年齢者(60歳以上)については「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介が行われた場合のみ申請可能です。

STEP 3|雇入登録(ハローワーク側の手続き)

対象労働者が事業所に雇い入れられると、ハローワークが「雇入登録」を行います。この登録は事業主の手続きではなく、ハローワーク側の事務処理です。

STEP 4|支給申請書の送付を受ける

管轄の労働局から、支給要件に該当する事業主に対して制度周知文と支給申請書が送付されます。送付がない場合は、管轄のハローワーク・労働局にお問い合わせください。

STEP 5|6か月ごとに支給申請する

支給申請書と添付書類(賃金台帳等)を管轄の労働局・ハローワークに提出します。第1期の支給申請は採用後最初の6か月が経過した後に行います。
第1期の支給申請期間は「支給対象期の末日の翌日から2か月以内」です。この期間を過ぎると不支給になるため、カレンダー管理を徹底してください。
電子申請(雇用関係助成金ポータル)でも申請できます。

STEP 6|審査・支給決定・受給

労働局が支給申請書の内容を審査し、適切であれば支給が決定されます。以降も同様のサイクルで各期の支給申請を繰り返します。

よくある失敗パターン5つ

失敗1|ハローワーク紹介なしに採用してしまった【最重要】

最も多い失敗です。「いい人材が見つかったので先に採用し、後からハローワーク経由にできないか相談した」というケースは対象外です。
本助成金は、ハローワーク等が「就職困難者の雇入れを決定するためのインセンティブ」として設計されているため、職業紹介を実質的に行っていない場合は一切対象になりません。対象者を採用したいと考えた時点で、まずハローワークへの求人提出から始めてください。

失敗2|有期雇用の雇用契約書に「自動更新」と明記しなかった

「更新することがある」「更新する場合がある」など、更新が不確定な表現では対象外となる場合があります。有期雇用で採用する場合は、雇用契約書に「本人が望む限り更新できる(自動更新)」旨を明記してください。

失敗3|賃金台帳を提出できなかった(令和8年4月1日以降は必須)

令和8年4月1日以降の支給申請から、賃金台帳の提出が必須となりました。賃金台帳の内容が確認できない場合は不支給となります。毎月の給与支払い時から適切に賃金台帳を整備・保存しておくことが重要です。

失敗4|支給申請期間を1日でも過ぎてしまった

各支給対象期には申請期間があり、期間内に提出しなければなりません。第1期以降も半年ごとに申請が必要なため、カレンダー管理を徹底し、余裕をもって書類を準備してください。

失敗5|対象外の人を採用してしまった

「知人の紹介で採用したシングルマザー」「自社サイトで応募があった障害者」は対象外です。また、「採用日から遡って1年以内に当社で働いていた人」も対象外です。採用前にハローワーク等に確認することを強くお勧めします。

他のコースとの使い分け・キャリアアップ助成金との組み合わせ

他のコースとの使い分け

特定求職者雇用開発助成金には「特定就職困難者コース」以外にも複数のコースがあります。

コース名主な対象者
特定就職困難者コース(本記事)高年齢者・障害者・母子家庭の母等
中高年層安定雇用支援コース就職氷河期世代(おおむね35〜60歳)の安定就労
生活保護受給者等雇用開発コース生活保護受給者・生活困窮者
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース発達障害者・難治性疾患患者
被災者雇用開発コース東日本大震災等の被災離職者

どのコースを使うべきかは採用する方の状況によって異なります。社労士にご相談ください。

キャリアアップ助成金との組み合わせ活用

特開金で有期雇用として採用した対象者を、一定期間後に正社員転換すると、キャリアアップ助成金(正社員化コース)も活用できます。

組み合わせ活用の試算例

取り組み助成金受給額(中小企業・例)
①区分(高年齢者等)を有期雇用で採用特開金(特定就職困難者コース)60万円
採用後6か月以上経過後に正社員転換キャリアアップ助成金(正社員化コース)※重点支援対象者80万円
合計140万円

ただし、転換前に「キャリアアップ計画書」をあらかじめ提出する必要があります。また、一部の助成金との間で併給調整が行われる場合があるため、事前に社労士か労働局にご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. オンライン自主応募(ハローワークのインターネットサービス経由)でも対象になりますか?

なりません。ハローワークのオンライン自主応募は対象外です。本助成金は、ハローワーク等が実質的に職業紹介を行ったことが要件です。

Q2. 同じ会社で複数の対象者を採用した場合、人数分申請できますか?

できます。採用した対象者それぞれについて支給申請が可能です。同じ区分の方を複数採用した場合も、1人ずつ申請できます。

Q3. 障害者を雇用する場合、他の障害者雇用助成金と重複して申請できますか?

一部の助成金とは「併給調整」が行われます。たとえば人材開発支援助成金の賃金助成部分とは調整があります。詳しくは社労士または労働局にご確認ください。

Q4. トライアル雇用(試行的な雇用)と組み合わせて使えますか?

使えます。トライアル雇用助成金を活用して雇い入れた対象者を、トライアル雇用終了後も引き続き継続して雇用する場合、本助成金の一部を受給できる場合があります(令和3年7月1日以降に障害者トライアル雇用で紹介された場合は第1期分は支給されません)。

Q5. 大阪で特定求職者雇用開発助成金の申請サポートができる社労士はいますか?

大阪市北区(梅田エリア)に拠点を置く「働き方研究所MiRAHATA」では、特定求職者雇用開発助成金を含む雇用関係の主要助成金の申請サポートを行っています。「採用前にどの助成金が使えるか確認したい」という段階からご相談いただけます。初回相談無料・土日対応可・オンライン相談可・全国対応です。

特定求職者雇用開発助成金の申請は、MiRAHATAにお任せください

MiRAHATAが選ばれる3つの理由

1. 採用前からの一貫サポート

「これから採用しようとしている方が対象になるか確認したい」という段階から、ハローワーク等への求人提出の確認・雇用形態の設定・支給申請書の作成まで一貫してサポートします。採用後に「実は対象外だった」という事態を防ぎます。

2. 令和8年度の2変更点に完全対応

賃金台帳必須化(令和8年4月1日〜)・高年齢者の個別支援要件追加(令和8年5月1日〜)など、令和8年度の変更点を完全に把握した上でアドバイスします。

3. キャリアアップ助成金との組み合わせ提案

特開金だけでなく、その後のキャリアアップ助成金(正社員転換時)との組み合わせを戦略的に提案し、受給総額を最大化します。

まずは無料相談から

「採用を検討している方が対象になるか確認したい」という段階からご相談いただけます。
TEL:06-7777-2605 携帯:090-1967-2223
お問い合わせフォーム:https://www.mirahata.com/index.php?toiawase
初回相談 無料|土日対応可|オンライン相談可|全国対応

まとめ

・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者・障害者・母子家庭の母等を採用した中小企業に最大240万円を3年間にわたって分割支給する助成金(通称:特開金)
・最重要:ハローワーク等の紹介による採用が絶対条件。直接募集・求人サイト・オンライン自主応募では対象外
・令和8年度の2変更点:①令和8年4月1日〜賃金台帳の提出が必須化 ②令和8年5月1日〜高年齢者(60歳以上)に「ハローワーク等での個別支援受講」が要件追加
・支給額は対象者区分(①60万円・②120万円・③240万円)と企業規模・労働時間で決まる定額
・半年ごとに分割支給のため、採用から最初の受給まで6か月かかる。資金繰り計画に組み込むことが重要
・有期雇用で採用する場合は雇用契約書に「自動更新」を明記すること
・キャリアアップ助成金(正社員化コース)との組み合わせで採用コストをさらに回収できる可能性がある